Vol.207 第21回フォーラム「医療の改善活動」全国大会 in 仙台が開催されました。

2日目の看護生産方式は、日本赤十字社福井赤十字病院副院長兼看護部長の内田智美先生、飯塚病院副院長兼看護部長の森山由香先生、社会医療法人敬愛会中頭病院統括看護部長の翁長多代子先生が登壇。座長は、社会医療法人愛仁会の伊藤成規常務理事の伊藤成規先生と武蔵野赤十字病院看護副部長の佐々木理恵先生でした。

冒頭で、佐々木先生から看護提供方式に関する説明がありました。看護提供方式とは看護方式とも呼ばれており、病棟で効果的な看護を提供するために定めたもので、複数の患者さんに24時間看護を提供するためさまざまな方式が採られているそうです。例えば「チームナーシング」という方式は、多くの場合2チーム体制で行われ、チームの中でリーダーやメンバーといった役割が分かれます。そしてチーム全体で患者さんをみる方式です。他にも、患者さんの状態を把握する係や医師の指示を受ける係、カンファレンス担当、与薬や注射の用意をする係など分業して看護する機能別看護方式などもあります。施設ごとに看護方式は異なり、どれが優れているというものではなく、施設の状況などに応じて最適な看護方式が選択されているそうです。

先頭の内田先生の演題は「『固定チーム・デイパートナー方式』導入による効果」でした。福井赤十字病院では、2009年から固定チーム・デイパートナー方式による看護を提供しています。この方式は、固定チームを基本として、日々の業務にパートナー制を取り入れた看護方式とのことです。その結果、長年の課題だった時間外勤務が減少。また、タイムリーに相談できるパートナーが身近にいることで、新人が安心してケアできるようになりました。さらに、日替わりパートナーのため全員で新人を育てるという職場風土が醸成され、新人や勤務異動者が職場に適応しやすい環境が整いました。一方、看護師の教育や安全の面では、導入当初に期待したほどの成果を得られず、課題になっているようです。

次に森山先生が「セル看護提供方式による働き方改革~誰もが楽しく働く職場を目指して~」という演題でお話 されました。飯塚病院は、2013年からセル看護提供方式(以下セル看護)を導入しています。これは、看護師 の動線に着目し、改善手法を用いて動線の無駄を省き、「患者のそばで仕事ができる=患者に関心を寄せる」を 実現する新しい看護方式。セル看護導入後は、褥瘡発生率や転倒転落件数が減少し、時間外勤務の削減、看護師 のモチベーション向上と共に離職率は低下、看護師のストレスも低下するなどさまざまな効果が表われているそ うです。

3番目の翁長先生の演題は「先取り看護を目指して」。中頭病院は、2016年10月に新病院へ移転し、同時にセル看護を導入します。しかし導入当初は部署によってうまく活用されていない状況があり、効果にばらつきがありました。そこで、セル看護定着に向けて現状把握と要因解析を行った結果、リーダー業務に着目。OJTの充実と安全の確保を目指し、リーダーの定義と役割業務の一部変更、各病棟の担当ルームの割り振り方法を2つ提案して実施しました。その後、ナースコール件数や転倒転落件数、患者受け持ち数、MET件数、退勤時間、離職率などが改善したといいます。

福井赤十字病院の内田先生

飯塚病院の森山先生

中頭病院の翁長先生

座長の安藤理事長(左)と北島事務局長(右)