座談会は(1)「2025年に向け、破綻の危機を孕む財政が社会保障制度にどのような影響を与えるか」(2)「2025年に向けて医療提供体制、ことに医療従事者の確保はできるのかどうか」(3)「2025年のさらに10年先の2035年を見据えて、保健医療政策ビジョンを示した「保健医療2035」の提言をどう捉えるか」という大きく3つのテーマで行われました。
(1)「2025年に向け、破綻の危機を孕む財政が社会保障制度にどのような影響を与えるか」については、財政破綻による社会保障制度崩壊の危機があるといういうことを前提に、それを回避するための医療改革について過去の経済同友会の提言に基づいて「民間活力による医療の規制改革の必要性」を述べました。私は、国がイニシアチブをとる改革ではなく、民間活力による健全な競争の中で病院や病床が淘汰され、適正な数に収まっていくことが、この改革の理想的なあり方であると考えています。
森先生の「国公立であろうが私立であろうが形はどうでもよく、役割が公的なものであるという考え方が必要だと思います。」というご意見や、土井先生の「現場サイドで知恵を出し合って医療の標準化を進め、その方向性に沿ったものは評価するけれど、そぐわないものは評価せずに費用を出さないことにする。(そのような)節約しながら診療の質を高めるわけですが、それと財政支出を効率化させることは(相反するものではなく)両立できると思っています。」というご意見、武久先生の「儲かることだけで損をすることは一切しないという姿勢では、地域住民から信頼されるはずはありません。それが地域に必要な医療であるならば、不採算なものであっても提供して、トータルで少しずつ利益を出していくことが経営努力です。その結果として地域住民からの信頼を得てこそ、病院経営は成り立つのだと思います。」というご意見はまさにその通りだと考えています。2015年8月28日には、「全国43の国立大学付属病院の2014年度決算が、国立大学法人移行後初めて合算で84億円の赤字となった。」と朝日新聞に掲載されました。消費税の影響とのことですが、国公立・民間ともに経営努力が必要なことに変わりありません。これから迎える危機に対し、国公立・民間を問わず、質の高い病院、すなわち地域から信頼を得る病院が生き残ることができる医療改革を進めることが必要であると考えています。