Vol.326 手術支援ロボット「da vinci(ダビンチ)xi」での手術を開始しました。

藤沢市の「健康と文化の森地区」に生まれた湘南慶育病院は、地域医療から質の高いリハビリテーション・慢性期医療に至るシームレスな医療を提供し、また、大学との連携による健康増進・抗加齢医学など最先端の研究を実践することを病院理念に掲げています。

2018年、私はローマのサンジョバンニ病院で、ダビンチの技術を学ぶために留学していました。当時、日本ではロボット手術はまだ保険診療の対象ではありませんでしたが、私はロボット手術の時代が必ず来ると確信していました。
日本の病院では、規模が大きくなるほど専門分野が細分化される傾向にありますが、イタリアでは一人の医師が幅広い手術に対応できる環境が整っています。
当時、私は大学病院で胃がんを専門としていましたが、胃がんのみを専門とする医師になることに疑問を感じていました。
外科医として、様々な疾患を腹腔鏡手術で治療することはできないだろうか。そして、可能であれば、ロボット手術によって、より広範囲な手術を行いたい。そのような思いが募り、湘南慶育病院への赴任を決意しました。

私が湘南慶育病院に赴任した当時、すでに3D画像を用いた腹腔鏡手術が行える環境が整っており、「この病院は先進的な技術を積極的に導入している」と強く感銘を受けたことを今でも覚えています。
おかげさまで、胃がんだけでなく、大腸や胆管など、あらゆる臓器の手術を行える環境に、大きな充足感を感じていました。
しかし、竹川理事長は現状に満足することなく、患者さんにとってより低侵襲で、より正確な手術を提供できる最先端の医療を実現するために、ダビンチの導入を検討されました。

ダビンチが実際に導入されてから、万全の体制で手術に臨むため、看護師は横浜市立大学附属病院へ、私自身は東京都立駒込病院へ手術の見学に行きました。
また、ダビンチのコンソールボックスに搭載されている、4本のアームを操作するトレーニングシステムを用いて、仕事終わりや休日などの時間を利用して、繰り返しシミュレーションを行い、技術の向上に努めました。さらに、2018年に留学先のローマ・サンジョバンニ病院で撮影した手術動画を何度も視聴し、イメージトレーニングを重ねました。

そして先日ダビンチによる一例目の手術が実施されました。
操作に慣れるまでには、やはり少し時間がかかりました。例えるなら、新車に乗り換えた日のような感覚です。昨日まで乗り慣れていた車とは、ボタンの位置やハンドリング、車幅などがわずかに異なり、注意深く運転する時のように、とにかく慎重に、安全第一を心がけました。
患者さんの出血量はわずか10グラムに抑えることができました。経過も非常に良好で、患者さんは手術翌日からリハビリを開始することができました。