Vol.352 2026年度健育会グループ新入職員中途研修を実施しました

今回の研修は、健育会グループがどのような組織で、何を考え、どのような方向に向かっているのかを皆さんに理解してもらうことを目的としています。日々与えられた仕事をこなすことが、健育会グループの理念につながっているということをしっかりと胸に刻んでほしいと思います。

健育会グループは今年創立73周年を迎えました。先代から理事長職を引き継ぐ際、組織は何のために存在するのか深く考えました。
私が理事長に就任した当時、民間病院は、質の悪い医療行為を行い高価な報酬を請求するという悪い風潮がありました。その一方で公立病院は、国から多額の補助金が投入されているにもかかわらず常に赤字経営でした。まともな診察を行う公立病院は赤字で当たり前だと思われていた時代です。

私はこの状況に強い危機感を覚えました。国の補償に頼りきるのではなく、民間のなせる力を発揮する。そして効率的かつ質の高い医療を提供し、国を支える民間病院を経営することが私の使命だと確信しました。そこで健育会グループのミッションに「光り輝く民間病院グループ」というテーマを掲げました。

効率的で質の高い健全な経営をする民間病院が、公立病院と競う時代が来なければ日本の医療は崩壊すると危惧していた私の考えは、近年ようやく取り立てられるようになりました。多くの患者さんを治療してもなお赤字経営である理由は診療報酬が足りないからだ、と述べる方もいます。
約40年前、当時の厚生省保険局長である吉村仁氏は、医療費が財政を圧迫して国を滅ぼすと提起し、「医療費亡国論」と称して論じました。私は吉村氏の考えに強く共感しています。病院が経営努力なしで黒字になる診療報酬をつくれば日本の医療は崩壊します。そうした緊迫感を抱いているからこそ、健育会グループは確固たる経営を確立し、国の医療を支えるため、さまざまな工夫を凝らして効率的で質の高い民間病院の実現を目指しています。

現在の医療費政策には、見直しの余地があると私は感じています。なかでも私が特に問題意識を抱いているのは、後期高齢者を対象とした医療供給体制のあり方です。
後期高齢者の方々の心身の状態は実に多様です。十分な体力があり、適切な治療を行えばすぐに健やかな日常を取り戻せる方もいれば、侵襲の大きい手術を行っても以前のような生活に戻ることが難しいケースもあります。医師は、迅速な社会復帰が見込める治療か、あるいは長期的な療養・継続的なケアを要するかを見極める高度な専門知識を備えています。

意思の確認や見通しのないまま受動的に手術を行ってしまうと、経管栄養や胃ろうによって「出口のない延命措置」が継続され、ただ命をつなぐだけの状態を生み出しかねません。このような措置は、患者さんご本人の意思が尊重されていない、尊厳を踏みにじる行為だと私は考えています。
回復の望めない画一的な延命措置は、ご本人だけでなく、ご家族や医療従事者も大きな苦しみを伴います。
早期復帰が見込める治療は集中的に行い、そうでない場合は無理な手術を避け、残された時間をご自身の望む形で穏やかに過ごしていただく。尊厳を何よりも尊重する姿勢こそが、患者さんの幸福と医療資源の最適化、ひいては医療費削減の双方をかなえる道筋であると感じています。

2008年、国による公立病院への補助金見直しなどを機に、いわゆる「医療崩壊」が社会的な問題となりました。かつてソ連が財政破綻によって崩壊した際にも証明されたように、国そのものの成り立ちが危うくなれば、医療機関も閉鎖を余儀なくされます。そうした事態において最も深刻な被害を受けるのは、治療や介護を必要とする弱い立場の方々です。
私は、どのような社会情勢になろうとも、そうした人々を決して生み出してはならないと強く感じています。
だからこそ、国の財政の波に揺らぐことのない、民間医療の力を確立することに大きな力を入れています。